皆さんこんにちは!ずっちです。
日本では2020年から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るっています。
そして新型コロナウイルスは、赤ちゃんの授かった家族にも容赦なく襲いかかってきています。
記憶に新しいのは、2021年8月に千葉で新型コロナウイルスに感染した妊婦さんの入院先が見つからず、そのまま自宅で出産し、赤ちゃんが死亡したニュースです。
本当に本当に悲しいニュースで、私も「もしも我が子だったら」と思うと涙が止まりませんでした。
そのニュースから国や自治体は慌てて、妊婦さんとその家族へのワクチンの優先接種や医療の連携体制の強化を発表し、取り組みが始まりました。
【ニュース】自宅療養中の早産で赤ちゃん死亡 “受け入れ体制強化を” 千葉
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210820/k10013214721000.html
【ニュース】厚労省「妊婦のワクチン接種優先を」自治体に通知
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210825/k10013221291000.html
しかし、よくよく考えてみると、「妊婦さんが感染症にかかると危険」というのは、決して新型コロナウイルスだけの話ではありません。
妊婦さんは新型コロナウイルスに限らず、様々な感染症のリスクにさらされながら、日々生活しているのです。
そう考えると、もし妊婦さんの抱える感染症のリスクに対する理解が世の中にあれば、もっと早く政府や自治体は対処できたのではないかとすら思ってしまいます。
今回の記事では妊娠中の感染症のリスクについて解説し、妊娠している妻が感染症にかからないために、夫としてなにができるかについて皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
【この記事は?】
- 妊娠中の感染症のリスクについて解説します。
- 気を付けるべき感染症も紹介します。
- 感染症予防における夫の役割について考えます。
それでは一緒に、男性が主体的にかかわる妊娠・出産を目指していきましょう!
妊娠中の感染症はどうして怖いのか。
それでは妊娠中の感染症のリスクがどのようなものか見ていきましょう。
リスク① 妊娠中は重症化しやすい
妊娠中は様々な病気にかかりやすく、重症化しやすい状況にあることが知られています。
妊娠中は免疫力が下がっているため、ウイルスに対して非常に弱くなっています。そもそも妊娠というものは、おなかの中に赤ちゃんという異物を受け入れて、育てている状態です。自分とは異なる生命体である胎児と胎盤は、免疫学的には異物なのです。
そのため、母体は赤ちゃんに対する免疫能力をある程度低くして、妊娠を維持しようとします。特に免疫力のうち「細胞性免疫(抗体と関与しない免疫機構)」が弱まっているため、感染症やがんにかかりやすくなるというリスクを抱えてしまうのです。
本来であれば、なんともない、あるいは軽くやり過ごせる程度の風邪でも、妊娠中は別物。高熱で寝込んだり、重症化しやすいという問題点もあるのです。
引用:ダンナのための妊娠出産読本 荻田和秀
また感染症にかかると、赤ちゃんが予定よりも早く生まれてしまう早産の可能性が高くなることもわかっています。
普段であれば何でもないウイルスも、重症化しやすいのは本当に怖いです。
早産のリスクも考えると妊娠期間で大切なのは、感染しないこと(感染予防)であることがわかります。
リスク② 胎児に影響がある場合も
母体が感染し、胎児に直接影響が出る感染症は決して多くはありません。
しかし中にはおなかの中の赤ちゃんにも感染し、ダメージを与えるものもあります。
感染頻度は決して高くはありませんが、感染してしまうと胎児への影響が大きい代表的な感染症を2つ紹介します。
●風疹
飛沫で人から人へ感染する感染症です。
妊娠初期に妊婦が風疹に感染すると、眼や心臓、耳などに障害をもつ「先天性風疹症候群」の子どもが生まれてくる可能性が高くなります。
風疹は流行する年とそうでない年とで大きな差があります。
国立感染症研究所の資料によると感染者は2020年は全国で100人でしたが、流行した2018年と2019年はそれぞれ感染者が2917人と2306人でした。
先天性風疹症候群の赤ちゃんは2014年以降報告がありませんでしたが、2018年~2019年の流行により、2019年~2020年に5人が報告されています。
【風疹に関する疫学情報】
https://www.niid.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/rubella-top/2145-rubella-related/8278-rubella1808.html
風疹は流行させないことが、重要なんですね。
●リステリア菌
リステリア菌はどこにでもいる細菌で、食中毒を引き起こします。
リステリア菌は加熱することで死滅しますが、4℃以下の低温や塩漬けであっても増殖することが他の食中毒菌と異なる特徴です。
妊婦さんがリステリア菌に感染するとおなかの中の赤ちゃんは大きな影響を受け、早産や胎児の死亡・死産を引き起こすことがあります。
食品由来によるリステリア症は、年間住民100万人あたり0.1~10人とまれなものです。
ただし、重症化すると致死率が高い疾患であることから、世界保健機関(WHO)においても注意喚起を行っています。
【厚生労働省 リステリアによる食中毒】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055260.html
妻が妊娠したら夫がすべき感染症予防
ここまでで、妊娠中の感染症の恐ろしさはわかっていただけたと思います。
では妊娠しているパートナーのために、私たち男性は何をすることができるのでしょうか??
実際に具体的な病気ごとに考えていきたいと思います。
風疹は夫の抗体検査とワクチン接種が最重要
風疹は妊婦さんにとって本当に怖い感染症ですが、実はワクチン接種で感染を予防することができます!
じゅあ、妊婦さん本人がワクチン接種すれば、いいんですね!
はい。妊娠前にワクチン接種をしていて、十分な抗体を持っている妊婦さんは安心です。
しかし、風疹のワクチン接種をしていない方や過去にワクチン接種はしたものの、時間が経過し、抗体が少なくなってしまった方はそういうわけにもいきません。
え、何でですか?後からでもワクチン接種すればいいのではないですか?
残念ながら、妊婦さんは風疹のワクチンを打つことができないんです。。。
妊婦さんは風疹のワクチンを打てません。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、ワクチンに関する報道や情報を目にする機会がかなり増えました。
その中でワクチンにも種類があるということを知った方もいるのではないでしょうか。
- 生ワクチン
- 不活化ワクチン
- mRNAワクチン など
風疹のワクチンはその中でも「生ワクチン」の部類されます。
健康な方であれば、生ワクチンであっても、問題なく抗体をつくることができます。
しかし、妊婦さんはどうでしょうか??
この記事の前半で書いた「感染症のリスク」を思い出してみてください。
妊婦さんはおなかで赤ちゃんを育てるために、免疫力が下がっていて、普段だったら問題のない量の細菌やウイルスでも重症化しやすかったです。
なので、仮に弱っている細菌やウイルスであっても、生きている病原体を妊婦さんに生ワクチンとして接種させることは大きなリスクであり、できないことになっているのです。
妊婦さんが危険な病気なのに、妊婦さんではワクチンを打てないのにはびっくりしました。
夫がワクチン接種することで、パートナーの感染の可能性を少しでも小さくしよう。
さて、妊婦さん本人がワクチンを接種できないとなると、次の手は何でしょうか。
皆さんお分かりかと思いますが、一緒に暮らす家族が風疹にかからないこと、つまり家族がワクチンを接種することが重要です。
初めての妊娠であれば、夫婦2人暮らしということも多いでしょう。
そんな時は、夫であるあなたが積極的にワクチン接種することで、大切なパートナーとおなかの赤ちゃんを守ることができるかもしれません。
風疹の抗体検査・ワクチン接種は自治体の補助が充実。
風疹については、自治体も妊婦さんへのリスクを理解しており、ワクチン接種の補助が充実しています。
私の住む自治体では、妊婦のパートナーは抗体検査無料、ワクチン接種3000円程度という風疹対策事業を行っていました。
皆さんの住む自治体でもおこなっている可能性が高いので、是非調べてみてください。
私も実際に風疹の抗体検査を受けましたが、結果は十分な抗体を有しておらず、ワクチンを接種しました。
過去に風疹のワクチンを打っている人でも私のように免疫が不十分な場合がありますので、すべての夫の皆さんに接種いただければと思います。
妊婦健診に同行すれば一緒に抗体検査をしてくれる病院もありますので、通う病院に確認してみてください!
- 風疹の予防接種は生ワクチンなので、妊婦さん本人は接種することができない。
- 夫が抗体検査・ワクチン接種を実施することで妊婦さんが風疹に感染する確率を少しでも下げることができる。
- 風疹の抗体検査・ワクチン接種は多くの自治体で実施を補助する仕組みが整えられている。
- 夫も一緒に妊婦健診に行って、一緒に抗体検査してもらうことがとても重要!!
インフルエンザは夫婦で予防接種を検討しよう
インフルエンザも妊婦が重症化しやすい感染症として知られており、流産や早産のリスクも上がるとされています。
インフルエンザを予防する方法として、ワクチン接種が知られていますが、こちらは風疹と異なり、不活化ワクチンのため妊婦でも接種することができます。
また、妊婦さんがインフルエンザワクチンを接種することで、おなかの赤ちゃんにも抗体が移り、赤ちゃんは生まれた後もインフルエンザにかかりにくいというメリットもあります。
以上の理由から、日本産婦人科学会が出しているガイドラインには、
「妊婦へのインフルエンザワクチン接種はインフルエンザの予防に有効であり,母体および胎児への危険性は妊娠全期間を通じてきわめて低いと説明する.」
と記載されています。
【産科ガイドライン2020】
妊婦さん本人がワクチン接種できるからと言って、家族はしないということはないようにしましょう。
ワクチンも絶対ではありません。
何度も書きますが、家族が病気にかからないことが一番の予防策です。
是非、夫婦でインフルエンザのワクチン接種を検討してみてください!
私たち夫婦の場合、妻の妊娠が発覚したのが11月でしたので、その後2人で慌ててインフルエンザワクチンの接種を行いました。
新型コロナウイルス感染症の影響で、インフルエンザ予防接種の予約が取りづらくなることもありますので、早めに行動するようにしましょう。
- インフルエンザは不活化ワクチンなので、妊婦さんも接種可能。
- 妊婦さんが接種することで、赤ちゃんも抗体を獲得できるというメリットも。
- 一番の予防は家族がかからないこと、夫も積極的にワクチン接種しましょう。
【食中毒など】食事や日常生活にも配慮を。
感染症は人から感染するものだけではありません。
日常生活にも感染症のもととなる病原体は潜んでいます。
- すべての食品(特に生鮮食品や非加熱食品)
- ガーデニングの土
- 動物の身体や動物の糞・尿 など
日常生活の中で病原体を完全に避けることはとても難しいです。
また、すべてを妊婦さんの自己管理にゆだねてしまうと、妊婦さんは自分で意識しなければいけないことが多すぎて、ストレスが溜まって、疲弊してしまうでしょう。
こんな時こそ、夫の出番です!!!
夫のサポートで、多少なりとも妊婦さんの負担を軽減することはできます。
例えば次のようなことはできるのではないでしょうか。
- 夫が積極的に料理をし、食中毒にならないような調理・食事を心がける。
- 家庭菜園の手入れは、できるだけ夫が行う。
- ペットのお手入れやトイレの掃除・お片付けは、できるだけ夫が行う。
なお、1点目の食中毒予防については厚生労働省のポスターがとても分かりやすいので、合わせてここで紹介させていただきます。
厚生労働省 食中毒予防の6つのポイント
我が家では犬一匹と金魚2匹を飼っているのですが、妻が妊娠中はできるだけペットの掃除は私が担当するようにしました。
料理も得意でしたが、いつも以上に火がしっかり通っているか確認して作りました。
ちょっとしたことかもしれませんが、この積み重ねは必ずパートナーのサポートになります。
【基本は大切】手洗い・マスク・三密回避を徹底しよう
これまでワクチン接種や身の回りに潜む感染症について見てきました。
残念ながら感染症の中にはワクチンがないものがたくさんあり、またすべてのウイルスや細菌を完全に避けることは不可能です。
そんな中、あえて書くほどのことではないかもしれませんが、「手洗い・マスク・三密回避」感染症予防の基本であり、どんな病気に対しても有効です。
- パートナーが妊娠したら、基本的な衛生管理を徹底してください。
- そして友人と複数人で遊んだり、会社の飲み会に行くのを少し控えてみてください。
何度でも書きますが、家族が感染症にかからないことが一番効果的な感染症予防なのです。
友達と会うのは、オンライン飲み会などをうまく活用できたらいいですね!
まとめ:妻の妊娠中は絶対に病気にならない!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
読んでいただいた方には、妊娠期間の感染症の怖さ、ワクチン接種の有効性、基本的な手洗い・マスクの重要性を理解いただけたのではないでしょうか。
ここで最後に一つ、2021年9月のニュースを共有したいと思います。
「こんな思い、他のママにしてほしくない」夫の看病で家庭内感染 580gの息子を出産した女性が伝えたいこと】
このニュースは新型コロナウイルスに感染した夫を看病した妊婦さんが、自身も感染してしまい、結果因果関係ははっきりしないものの、早産になってしまったという体験談です。
この女性は「家庭内感染を防げたのではないか」と自身を責めていますが、たぶんもっと責任を感じているのは感染症を家に持ち込んで、感染源になってしまった夫ではないかと想像します。
男性の皆さんには、妊婦さんにとって感染症がどれだけ怖いものなのかを理解いただき、「妻の妊娠中は絶対に自分は病気にならない」ということを生活の一つの目標にして、行動していただけたら嬉しいです。
ずっち